第六回 円錐新鋭作品賞

花車賞(澤好摩推薦)

木幡忠文 「去るとき」  読む

白桃賞(山田耕司推薦)

小谷由果 「漣」     読む

白泉賞(今泉康弘推薦)

星野いのり 「通信表」  読む

推薦作品(一句推薦)   読む

澤好摩   第二席  土屋幸代 「日日」   読む

澤好摩   第三席  稲畑とりこ 「骨と肉」 読む

澤好摩   奨励賞  内野義悠 「さめぎは」

山田耕司  第二席  小泉野魚 「すいぎよ」 読む

山田耕司  第三席  榊原遠馬 「たわごと」 読む

山田耕司  林檎賞  吉冨快斗 「糸芒」

今泉康弘  第二席  佐藤日田路 「暗室」  読む

今泉康弘  第三席  高田祥聖 「シャンデリア」 読む

今泉康弘 エリカ賞 雨宮あみな 「綿毛の至り」

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澤好摩  選評 言葉に対する畏敬の念    読む

山田耕司 選評 それは孤独の味がして    読む

今泉康弘 選評 俳句らしさはあなたが作る  読む

・・・

第六回円錐新鋭作品賞 編集部より  読む

白泉賞 星野いのり「通信表」

さくらふるみんなでコロナごっこしよ
新しい本はツルツルチューリップ
かえるぴょこぴょこ一人でもお留守番
遠足もお昼の鬼ごっこもなくて
給食はみんながとおいしゃぼん玉
五月六月くっついて九九の数
先生がさいしょのコロナぶどうゼリー
給食のでかいエプロンかたつむり
水筒をふってふりまわして涼しい
もうずっと休みのメイの傘にカビ
なんどでも動画の花火大会は
休んだら朝顔しわしわになった
真っ赤な月があつあつで苦しそう
アルコールティッシュとどんぐりのポッケ
三組はコロナのクラスくるみパン
みかんむく陽南乃の顔をずっと見る
たたかれた黒板消しはせきこんで
順番に雪をさわった手を洗う
手ぶくろで配るクリスマスのケーキ
きれいな手きれいなマスクさようなら

小泉野魚 「すいぎよ」

山田耕司 推薦第二席

冬やがて果実酒となる金魚かも
文字化けの海のわきたつ冬牡丹
粕汁を吹けば逆説めく尾骨
遠火事や会員証の失せしまま
Jアラート鮫に臓物戻らざる
寒肥の指に水輪のまとひつく
皸に鱗のささるたんじやうび
しにがほのゆたかなるうを冬終る
寒鯉の月の裏より出でし匂ひ
雪解けや彼の日の反古のくきやかに
良き詩語の受精あれかし春の雷
草餅や輪郭ゆるぶ旅鞄
たみぐさを喰ろうて巨魚の口あたたか
揚ひばり電気に濡れゆける町を
朧月うをの尿意をかんがへる
龍天に突けばどろりと目玉焼
水圧ををさめ水槽シネラリア
逃水を追ふにくすりの名を唱ふ
胎児は鰓失ふ頃か花筏
地球史のすなはち魚類飼育譚

第六回円錐新鋭作品賞募集要項

*未発表の俳句作品20句をお送りください(多行作品は10句)。

*作品にはタイトルをつけてください。

*受付開始 2022年1月15日

*締め切り 2022年2月15日

*年齢・俳句歴の制限はありません。

*受賞作品は「円錐」93号(2022年4月末日刊行予定)に掲載いたします。

ご応募の際には、お名前(筆名・本名)、ご住所、メールアドレスなどの
連絡先をお書き添えください。折り返し、編集部より連絡申し上げます。

作品送付・お問い合わせ先  ensuihaiku@gmail.com

円錐91号(2021/10/30発行)

特別作品

びーどろ絵  栗林浩
辺土通信87  味元昭次       
白夜     山本雅子

円錐の一句

三寒四温除霊されちゃったパン 井口可奈 /山﨑浩一郎 
火を仰ぐ人人柱人柱 山田耕司 /今泉康弘 
東京へ柚子の大馬鹿送りけり 味元昭次 /澤 好摩 

バックミラー

同時代俳句は何故書かれたのか /依光陽子(特別寄稿)
動く季語について考えてみた /後藤秀治
大切な下五 /栗林浩

俳句トス

男老いて男を愛す葛の花 永田耕衣  

セッター 澤好摩/スパイカー 矢上新八

さびしさは星をのこせるしぐれかな 飛鳥田 孋無公

セッター 田中位和子/スパイカー 和久井幹雄

冬籠心の奥のよしの山 与謝蕪村

セッター 山本雅子/スパイカー 横山康夫

澤好摩 河口聖 句画展鑑賞記    来栖啓斗

詩学シリーズ 稲妻の詩学 今泉康弘

同人作品 江川一枝/摂氏華氏/荒井みづえ/立木司/小倉紫/矢上新八/後藤秀治/丸喜久枝/原田もと子/大和まな/澤好摩/田中位和子/横山康夫/三輪たけし/山﨑浩一郎/和久井幹雄/小林幹彦/橋本七尾子/山田耕司/今泉康弘/来栖啓斗

同人作品評  山田耕司・澤好摩

第五回円錐新鋭作品賞 編集部より

過去最多67編のご応募をいただきました(第一回の募集は47編、第二回は40編。第三回は58編、第四回は46編)。実に驚きです。同人誌の企画にこれだけ多くの方々が参加してくださることに、感動しています。

 募集条件は、未発表の20句(多行作品は10句)。作者の俳句歴や年齢などの条件、一切不問。選考は、円錐編集部・澤好摩、山田耕司、今泉康弘。ご応募の折に、編集部からは各作者に版面の著者校正を依頼。それから審査に。今回は、感染症拡大予防への対応として、座談会はいたしませんでした。各自が自分のペースで選び、評を執筆しています。 

 審査の上、20句を対象に、第一席から第三席までを選出。1句単位での顕彰は、5句。あらたに「これからに期待する作家」という枠を設けさせていただきました。

 編集部としては予想していたことではあるのですが、三人の審査員の推薦作品が、まったく、重なりません。バラバラです。これこそが、個々の価値観を頼みに活動する同人誌ならではの結果、と言えるのかもしれませんが。

 ご応募くださいました皆様、そして、募集情報の拡散などにご尽力くださいました皆様に、あらためて感謝と敬意を捧げたく存じます。           

             (円錐編集部・山田)

第五回円錐新鋭作品賞

花車賞(澤好摩推薦)

森 瑞穂 「吊革の穴」  読む 

白桃賞(山田耕司推薦)

原麻理子 「距離」    読む

白泉賞(今泉康弘推薦)

摂氏華氏 「王の行方」  読む

推薦作品(一句推薦)   読む


澤好摩  第二席 中村たま実「ふうせん」 読む

澤好摩  第三席 内野義悠「抜錨」 読む

澤好摩  奨励賞   古田秀「立方体」

山田耕司 第二席 綱長井ハツオ「ズキズキ、キリキリ、ムカムカ」読む

山田耕司 第三席 五十嵐一真「真昼の手帳」 読む

山田耕司 林檎賞 千住祈理 「筑波研究学園都市」

今泉康弘 第二席 夜行「飼ひならす」 読む

今泉康弘 第三席 中矢温「はい」 読む

今泉康弘 エリカ賞 藻屑ちゃん「きみにDM」


澤好摩  選評 最初の読者としての作者 読む

山田耕司 選評 〈文は文なり〉を基準として 読む

今泉康弘 選評 光を求める事は光になる事 読む


第五回円錐新鋭作品賞 編集部より 読む

第五回推薦作品

澤好摩 推薦

埋め立ての町に浜の名みやこ鳥    中村たま実   
抜錨の濁りをとほく春の雪       内野義悠
らしからぬことをしてゐる雛祭    霜田あゆ美 
ふいに来るその日はいつか凧      植田井草
夏未明そっとバールのようなもの    うっかり

山田耕司 推薦

缶詰にぐずる水音秋深し    クズウジュンイチ
ピンボール突き撃つコルク終戦日     佐藤修 
にはたづみ鼠花火を往なしたり    舘野まひろ
進むからこぐのをやめて晩夏光     田中木江     
かけっこの脚うずまきで描く木の芽時 細村星一郎

今泉康弘 推薦

窓開けて春をお部屋に案内す      大野美波
パーカーの手とか林檎を入れる部分   田中木江  
脳に打つ成人の日のチップかな    高林やもり
カトレアやうつくしいはらわたばかり  佐々木紺      
ぎろちんの安全装置胡瓜揉      中町とおと

白泉賞 摂氏華氏 「王の行方」

落椿宙にとどまる殺戮史
わたつみや大本営の春燈
仲たがひしてゐる三色菫かな
すめらぎの股肱となりし揚雲雀
葉桜に揉まれてゐたる御真影
神統譜偽書を曝書のさきがけに
盤上の王の行方や敗戦日
冷麦や玉音盤のよく回る
鈴虫や闇に継ぎ目のありにけり
手をふれてゆく白萩に隙間かな
モザイクをかけても桐一葉とわかる
花八手教育勅語に朕の文字
枇杷の花入江は紺を流したる
太郎冠者くさめしてゐる鳥屋かな
玉に乗る象のこころや冬銀河
黄の密を荘厳したる柚子湯かな
コロナウイルス何を喰ふらむ初御空
百万回再生したるマスクかな
鯛焼きの餡を拳でたたき出す
雪片は雪片を消しながら降る

白桃賞 原麻理子 「距離」  

冷めてすぐしぼむケーキや春の風
こでまりの花すれ違ふときの距離
カーネーション人々の呼気混ざり合ふ
通話がしたい葉桜いつせいに窓を
まだ梅雨ぢやない雨ここにゐない人
紫陽花の葉のごはごはと布巾煮る
あの蟬と思ふをととひ見た羽化の
見せていい服日盛りの戸が開いて
窓のある封筒メロンの熟れてをり
ゆふがたや水といつしよに買ふ花火
朝顔の閉ぢて脚立の横だふし
親しさや桃の入つてゐたくぼみ
マグカップ洗つて帰る良夜かな
月しばらく見上げて入る広い部屋
初雪や肉屋に金のステッカー
十二月高速道路の幅の川
クリスマス重ねて仕舞ふ軽い椅子
雪にフードの人の向かふへ薄くなる
梅のもう咲く目が合へば会釈する
花を見てゐる牛乳を買ひに出て