榊原遠馬 「たわごと」

山田耕司 推薦第三席

薔薇の芽や人に姿勢を崩させて
芝さくら長き名のバンドが流行る
春の机に一筆箋のたわごとも
ホッピングのたまに高々春の夕
晩春の汝が怒つて呉れにけり
とんがりコーン指に無言の劇や夏
名訳の原文知らず愛鳥日
炎昼の駅に警官集ひけり
踊子や氷菓を齧るときもなほ
情けなき草笛に応へむとする
猫運ぶ鞄の網目秋涼し
置き配の箱の重なる夜寒かな
霜降や花瓶の色に水満ちぬ
さうぢやないと言ふとき甘き紅茶の香
凍星や吊革は遅れて揺らぐ
測量の二人一組冬青空
ウインクは下手でスキーのさらに下手
腸のやうにマフラー鞄より
新宿の人に凭れて年の暮
彫刻刀に伝へる力雪催