白桃賞 小谷由果「漣」

雛壇の雛より小さき牛車かな
永き日の大きサモエド梳る
花冷やベンチの隙のソーセージ
万愚節フライドポテト長長し
釈奠や祭器の鱈子ラップされ
カリンバの長音階の緑雨かな
背中毛の縞栗鼠めけるシャワーの子
スプーンに漣となるシャーベット
俎板は牛乳パック鰺大漁
涼しさやカフェに醤油の一斗缶
鯊釣の餌虫は切られ針刺され
嗤はれしこゑのまぼろし夜長なり
秋澄める万年筆の吐く青さ
爽やかや最上階の非常口
冬隣ざらめの焼け残るクッキー
富士塚の銀杏落葉を冠しをり
オカリナの息の長さや冬の川
モモンガの目に冬の夜の淵のいろ
初鏡椅子の猫脚嚙る犬
枯山を濡らしてまはる犬の鼻