高田祥聖 「シャンデリア」

今泉康弘 推薦第三席

三つ編みを解かず蠍てふ少女
短夜や幾度も脚の上がりたる
バレリーナてふ割れ物や桜桃忌
二人では見るつもりなき花火かな
前髪を掴まれどこまでが花野
新月やシャンデリアには紐の無い
首絞められて喉の良く鳴りたる夜長
冥王の石榴おひとつくんなまし
小鳥ことり逢ひたいのかもしれぬ日の
帰り道はや秋寂びとなりにけり
ひとりでに生きて一人や風邪の夜
毛布小さしあまりにからだ薄っぺら
糾弾や人差し指に冬の蝶
死にたしと言ひて氷の上辺だけ
空腹しか知らぬからだや水温む
爪を噛む癖を忘れて春日向
落花飛花捨つダイレクトメール捨つ
花衣掛け頬杖の夜もすがら
笑ふから笑ひ疲れて睡花
からだじゅう呼び鈴のある四月かな