第八回円錐新鋭作品賞募集のお知らせ

●未発表の俳句作品20句をお送りください(多行作品は10句)

●受付開始 2024年1月15日

●応募締切 2024年2月15日

●年齢・俳句歴の制限はありません。

●応募料・審査料などの経費は一切必要ありません。

●ご応募の際には、お名前(筆名・本名)、ご住所、メールアドレスなどの連絡先をお書き添えください。折り返し、編集部より連絡申し上げます。

●受賞作品は「円錐」101号(2024年4月末日刊行予定)に掲載。

●選者
小林恭二(特別選者)
山田耕司
今泉康弘

宛先 円錐編集部 ensuihaiku@gmail.com

ホームページ http://ooburoshiki.com/haikuensui/
※上記HPにて、今までの受賞作品・審査コメントなどをご覧いただけます。

第七回 円錐新鋭作品賞

花車賞(澤好摩推薦)

土屋幸代「泥に立つ」      読む

白桃賞(山田耕司推薦)

吉冨快斗「遮断機壊してまわる」 読む

白泉賞(今泉康弘推薦)

池田宏睦「奥」         読む

推薦作品(一句推薦)    読む

澤好摩  第二席  青木ともじ「湯を沸かす」 読む

澤好摩  第三席  杉澤さやか「香の物」   読む

山田耕司 第二席  藤田俊「口腔」      読む

山田耕司 第三席  あさふろ「点滅」     読む

今泉康弘 第二席  細村星一郎「喝采」    読む

今泉康弘 第三席  とみた環「まぼろせる」  読む

       ・・・

澤好摩  選評 想像力とその波及効果  読む

山田耕司 選評 みずからを縛る自由を  読む

今泉康弘 選評 季節の地獄       読む

       ・・・

第七回円錐新鋭作品賞 編集部より    読む

澤 好摩 逝去のお知らせ

澤好摩が逝去しました。

死因は、脳挫傷。

死亡時刻は、7月7日の午前10:35。

東北方面に一人旅に出ていた澤さん。旧友を訪ねる旅でした。仙台で一泊し、米沢へ移動。楽しい時間を過ごした後、ホテルに戻り、タクシーから降りたところで転倒し頭を強打したそうです。

ホテルのスタッフにより救急車が呼ばれ、緊急搬送。病院では、まだ意識があったとのこと。

翌日も、医療チームにより治療がほどこされていましたが、午後遅くになり意識が混濁し、金曜日の逝去に至りました。

ご親族だけによる密葬にて静かにお送りしました。

ご親族のご希望により、ご自宅への香典・供花・ご弔問はかたくお断り申しあげます。

生前のご厚誼に感謝申し上げ、ここに謹んで澤好摩逝去をご案内申し上げる次第です。また、連絡不行き届きの点多々あるかと存じますが、おゆるしいただければ幸いです。

なお、「澤好摩を偲ぶ会」を友人有志にて 今秋には開催する予定です。詳細につきましてはあらためてご報告申し上げます。

                  文責 山田耕司

澤好摩(さわ・こうま)1944年 東京生 享年79歳

澤好摩  「澤好摩 河口聖 句画展」にて (撮影 野崎眞理子氏)

第七回円錐新鋭作品賞 編集部より

 第7回です。
 今回は79編のご応募をいただきました(第1回47編、第2回40編、第3回58編、第4回46編、第5回67編、第6回63編)。過去最多です。
 紙媒体の俳句同人誌に多くの方々のご応募をいただき、今回も感動しております。
 募集条件は、未発表の20句(多行作品は10句)。作者の俳句歴や年齢などの条件、一切不問。選考は、円錐編集部・澤好摩、山田耕司、今泉康弘。ご応募の折に、編集部からは各作者に版面の著者校正を依頼。それから審査に。今回も、感染症拡大予防への対応として、座談会はいたしませんでした。各自が自分のペースで選び、評を執筆しています。 
 審査の上、20句を対象に、第一席から第三席までを選出。句単位での顕彰は、5句。毎度のことではございますが、三人の審査員の推薦作品が、まったく、重なりません。バラバラです。これこそが、個々の価値観を頼みに活動する同人誌ならではの結果、と言えるのかもしれませんが。
 ご応募くださいました皆様、そして、募集情報の拡散などにご尽力くださいました皆様に、あらためて感謝と敬意を捧げたく存じます。           

            (円錐編集部・山田耕司)

とみた環「まぼろせる」

今泉康弘 推薦 第三席

液晶のモアレ ・ 二月のうす曇
空爆が ・ テレビ売り場を一斉に
菜の花や ・ 手をとる遊び赦されぬ
戦いに明けくれて描く ・ 自 由 帳
春は夢殿 ・ ロマノフの猫枕
予言書の ・ 昏さに装う訳詩集
抵抗者の詩に ・ 肉色 ・ の手を叩く
戦況や ・ 今朝のラジオと焦げのパン
麦青む志願の兵を ・ 思う ・ ほど
全集積まれひと隅を ・ 病巣のごと
背泳ぎに不滅の竜を ・ ま ぼ ろ せ る
水音のはだしが ・ 逃 げ て ・ 日雷
冷房裡 ・ 兵捕われて国ことば
日盛の傾ぐ額に ・ 口づけを
秋暑き遊具が ・ 青と赤の管
仰角のあやうき月 ・ の裸人像
椎の実が秋よと解り ・ ながら落つ
外つ者の猛き抱擁 ・ 白鳥来
兎の目 ・ 武器を嬉しむ男の子の目
戦争の件 ・ の無きに ・ 日記買う

細村星一郎「喝采」

今泉康弘 推薦 第二席

手繰り寄せれば鋼鉄の糸だった
喝采をそのまま海へあけわたす
迷いこんだ鳥を粗雑に塗ってもいい
霙浴びても浴びても手には割れた水晶
硬質な回転を血が嬉しがる
私を刺していった光の蛾 ふらふら
触れてきた木々がコントラバスを鳴る
朧はわたし 誰かの投げたブーメラン
シグナルに触れても鹿のもとまで走る
モノリスは胸の夏野に咲く楔
飛び込めば草の文様 繰り返す
水の刺繍 ゆれる梯子に立っていたい
かぐわしく私を動く蛇もいる
桃色の弾丸:部屋を跳ね回る
夏草は眠りの海を轟くか
いま旗に命の煙描き記す
糸の心臓:まばゆく墜ちる針の先
低く飛びながら椿の赤を思う
砂丘を登るきれいな錨持ったまま
山を透く一滴があり両眼で見る

あさふろ「点滅」

山田耕司 推薦 第三席

日だまりを目皿の泳ぐ淑気かな
白菜に水をあやまりつづけをり
ひしひしとひかりを語る椿餅
囀や一円玉に傷あまた
鳥影の輪転したる花曇
緑さすガードレールの痛ましき
水平線をはじく睫やレモン水
夏蝶の点滅したるアーケード
海光や黒蟻の背の透きとほる
能面はなで肩だらう冷し瓜
天井を見下ろしてゐる昼寝覚
煙草吸ふ肘の重さや夏の月
白桃を剥く親指の暗がりに
膝下の遠のいてゆく残暑かな
宵祭ひとの匂ひをうつし合ふ
紙コップ二つ離れぬ秋半ば
冬林檎無蓋列車を通過させ
雪の夜は十二階建ての翻車魚
風花や柱の心地して老ゆる
冬空に窓穿ちたる脚立かな

藤田俊「口腔」

山田耕司 推薦 第二席

チーズの名挙げて朝寝へもどりけり
朧夜の魚肉ソーセージの金具
亀鳴いて辞令を渡す・渡される
嚙んでいる鶏の心臓春の雨
行く春の高台にある配水池
千切りのキャベツを嚙んでいる団地
折り紙の続きのようにどくだみが
歯ブラシをくわえて昼の蛇のこと
プールから上がりネオンを浴びている
くらげ見て記憶をひとつ置き去りに
ひぐらしや上司と二人パイプ椅子
台風一過手で覆わずにするあくび
子規の忌のじっと見ているバーコード
無花果のウォーターベッド光差す
菊なますオンラインからオフライン
ドアノブの重さのあとの冬林檎
遠火事を多肉植物越しに見る
空洞に満ちるバリウム冬の蝶
枯野へと舌という肉突き出して
直線で描かれる猫野水仙