白泉賞 星野いのり「通信表」

さくらふるみんなでコロナごっこしよ
新しい本はツルツルチューリップ
かえるぴょこぴょこ一人でもお留守番
遠足もお昼の鬼ごっこもなくて
給食はみんながとおいしゃぼん玉
五月六月くっついて九九の数
先生がさいしょのコロナぶどうゼリー
給食のでかいエプロンかたつむり
水筒をふってふりまわして涼しい
もうずっと休みのメイの傘にカビ
なんどでも動画の花火大会は
休んだら朝顔しわしわになった
真っ赤な月があつあつで苦しそう
アルコールティッシュとどんぐりのポッケ
三組はコロナのクラスくるみパン
みかんむく陽南乃の顔をずっと見る
たたかれた黒板消しはせきこんで
順番に雪をさわった手を洗う
手ぶくろで配るクリスマスのケーキ
きれいな手きれいなマスクさようなら

小泉野魚 「すいぎよ」

山田耕司 推薦第二席

冬やがて果実酒となる金魚かも
文字化けの海のわきたつ冬牡丹
粕汁を吹けば逆説めく尾骨
遠火事や会員証の失せしまま
Jアラート鮫に臓物戻らざる
寒肥の指に水輪のまとひつく
皸に鱗のささるたんじやうび
しにがほのゆたかなるうを冬終る
寒鯉の月の裏より出でし匂ひ
雪解けや彼の日の反古のくきやかに
良き詩語の受精あれかし春の雷
草餅や輪郭ゆるぶ旅鞄
たみぐさを喰ろうて巨魚の口あたたか
揚ひばり電気に濡れゆける町を
朧月うをの尿意をかんがへる
龍天に突けばどろりと目玉焼
水圧ををさめ水槽シネラリア
逃水を追ふにくすりの名を唱ふ
胎児は鰓失ふ頃か花筏
地球史のすなはち魚類飼育譚

円錐91号(2021/10/30発行)

特別作品

びーどろ絵  栗林浩
辺土通信87  味元昭次       
白夜     山本雅子

円錐の一句

三寒四温除霊されちゃったパン 井口可奈 /山﨑浩一郎 
火を仰ぐ人人柱人柱 山田耕司 /今泉康弘 
東京へ柚子の大馬鹿送りけり 味元昭次 /澤 好摩 

バックミラー

同時代俳句は何故書かれたのか /依光陽子(特別寄稿)
動く季語について考えてみた /後藤秀治
大切な下五 /栗林浩

俳句トス

男老いて男を愛す葛の花 永田耕衣  

セッター 澤好摩/スパイカー 矢上新八

さびしさは星をのこせるしぐれかな 飛鳥田 孋無公

セッター 田中位和子/スパイカー 和久井幹雄

冬籠心の奥のよしの山 与謝蕪村

セッター 山本雅子/スパイカー 横山康夫

澤好摩 河口聖 句画展鑑賞記    来栖啓斗

詩学シリーズ 稲妻の詩学 今泉康弘

同人作品 江川一枝/摂氏華氏/荒井みづえ/立木司/小倉紫/矢上新八/後藤秀治/丸喜久枝/原田もと子/大和まな/澤好摩/田中位和子/横山康夫/三輪たけし/山﨑浩一郎/和久井幹雄/小林幹彦/橋本七尾子/山田耕司/今泉康弘/来栖啓斗

同人作品評  山田耕司・澤好摩

第五回円錐新鋭作品賞 編集部より

過去最多67編のご応募をいただきました(第一回の募集は47編、第二回は40編。第三回は58編、第四回は46編)。実に驚きです。同人誌の企画にこれだけ多くの方々が参加してくださることに、感動しています。

 募集条件は、未発表の20句(多行作品は10句)。作者の俳句歴や年齢などの条件、一切不問。選考は、円錐編集部・澤好摩、山田耕司、今泉康弘。ご応募の折に、編集部からは各作者に版面の著者校正を依頼。それから審査に。今回は、感染症拡大予防への対応として、座談会はいたしませんでした。各自が自分のペースで選び、評を執筆しています。 

 審査の上、20句を対象に、第一席から第三席までを選出。1句単位での顕彰は、5句。あらたに「これからに期待する作家」という枠を設けさせていただきました。

 編集部としては予想していたことではあるのですが、三人の審査員の推薦作品が、まったく、重なりません。バラバラです。これこそが、個々の価値観を頼みに活動する同人誌ならではの結果、と言えるのかもしれませんが。

 ご応募くださいました皆様、そして、募集情報の拡散などにご尽力くださいました皆様に、あらためて感謝と敬意を捧げたく存じます。           

             (円錐編集部・山田)

第五回円錐新鋭作品賞

花車賞(澤好摩推薦)

森 瑞穂 「吊革の穴」  読む 

白桃賞(山田耕司推薦)

原麻理子 「距離」    読む

白泉賞(今泉康弘推薦)

摂氏華氏 「王の行方」  読む

推薦作品(一句推薦)   読む


澤好摩  第二席 中村たま実「ふうせん」 読む

澤好摩  第三席 内野義悠「抜錨」 読む

澤好摩  奨励賞   古田秀「立方体」

山田耕司 第二席 綱長井ハツオ「ズキズキ、キリキリ、ムカムカ」読む

山田耕司 第三席 五十嵐一真「真昼の手帳」 読む

山田耕司 林檎賞 千住祈理 「筑波研究学園都市」

今泉康弘 第二席 夜行「飼ひならす」 読む

今泉康弘 第三席 中矢温「はい」 読む

今泉康弘 エリカ賞 藻屑ちゃん「きみにDM」


澤好摩  選評 最初の読者としての作者 読む

山田耕司 選評 〈文は文なり〉を基準として 読む

今泉康弘 選評 光を求める事は光になる事 読む


第五回円錐新鋭作品賞 編集部より 読む

第四回円錐新鋭作品賞


花車賞(澤好摩 推薦)

「夜の学校に手紙を置いてきた」 来栖啓斗      →読む


白桃賞(山田耕司 推薦)

「適当」 千野千佳                    →読む


白泉賞(今泉康弘 推薦)

「窓がひとつだけあいてゐて」 たかなしあきら     →読む


推薦句                      読む


選考対談                      読む


俳句同人誌「円錐」第 85号誌上にて発表(2020年4月30日発行)

第四回 円錐新鋭作品賞募集!

俳句の世界は、これほど、広い。

受付開始 2020年1月15日 応募締切 2020年2月15日

審査  澤好摩・山田耕司・今泉康弘

応募用アドレス ensuihaiku@gmail.com

お名前(筆名・本名)、ご住所、メールアドレスなどの
連絡先をお書き添えください。編集部より連絡申し上げます。

未発表の俳句作品20句をお送りください(多行作品は10句)。*作品にはタイトルをつけてください。*締め切り2020年2月15日*年齢・俳句歴の制限はありません。*受賞作品は「円錐」85号(2020年4月末日刊行予定)に掲載いたします。■

「円錐」について

1991年(平成3年)5月
澤好摩・山田耕司を中心に東京で創刊。
2016年(平成28年)7月
通巻70号に達し、かつ、創刊25周年を迎えた。

発行人 澤好摩

編集人 山田耕司・今泉康弘・澤好摩

季刊(年4回発行)

 


「円錐の二十五年」  澤 好摩

「円錐」70号(2016.8.15発行)より転載

【沿革と事務担当】

「円錐」は平成三年に創刊。この号をもって70号となる。編集は創刊号より61号までが澤好摩、62号より山田耕司が担当。それを補佐する立場の編集委員としては今泉康弘、橋本七尾子、澤好摩がおり、発行・会計業務は澤好摩が担当する。

【創刊同人】
創刊同人(かつ、長期にわたって在籍の同人)は、今泉康弘、糸大八、斎藤康子、澤好摩、橋本七尾子、味元昭次、矢上新八、山田耕司、横山康夫の九名。

【主な特集一覧】
「俳句にとって〈新しみ〉とは何か」創刊号
「俳句の〈読み〉とわが現在」3〜5号
「近代俳句再発見」14、15号
「俳句と映画」20、21号
「俳句作品における〈実感〉とは」26、27号
「高屋窓秋と現代俳句」29〜31号
「俳句における青春性」41、42号
「平成における無季俳句」46、47号
「戦後派俳人の出発と終焉」50、51号
「俳句における恋」53、54号
「高柳重信」57〜59号
「追悼・糸大八」臨時増刊号
「澤好摩という座標」62号
「小特集/原田浩佑」63号
「前衛よさびしくはないか」64、65号
「昭和が遠くなりません」65〜67号
「戦後派俳人作品鑑賞を鑑賞する」68、69号

【連載】
今泉康弘「山口誓子から西東三鬼へ、または『戦火想
望俳句』発生編」18、19、22、23号
今泉康弘「青い街 松本竣介と街と新興俳句」25〜28号
今泉康弘「地獄絵の賦 地獄絵から戦火想望俳句へ」
30、31号
今泉康弘「新興俳句の誕生」 34〜38号
栗林浩「林田紀音夫探訪」37〜39号
今泉康弘「エリカはめざむ 渡邊白泉の沼津時代」40
〜45、48、49、51〜53号
栗林浩「ルポ的飯島晴子論」42、43号
栗林浩「入門・摂津幸彦と田中裕明」46〜50号
今泉康弘「どれだけ絶望したならば恋を詠えるのか」
54〜57、60、61号
今泉康弘「月下の伯爵 リラダンと重信」57〜59号
小林恭二「澤好摩作品鑑賞」62〜65、67、 68、70号

【創刊以来の同人の出版物】
平成6年 糸大八句集『蛮朱』
橋本七尾子句集『仙臺』
平成7年 味元昭次句集『天魚』
斎藤康子句集『雀色時』
江川一枝句集『五十六句』
平成12年 横山康夫句集『櫻灘』
平成19年 栗林浩著『俳人探訪』
平成20年 澤好摩句集『風影』
横山康夫句集『天體』
栗林浩著『続俳人探訪』
長岡裕一郎句集『花文字館』
平成21年 現代俳句文庫『澤好摩句集』
平成22年 山田耕司句集『大風呂敷』
平成23年 栗林浩著『京大俳句会と東大俳句会』
栗林浩著『続々俳人探訪』
糸大八句集『白桃』
平成25年 澤好摩句集『光源』
栗林浩著『俳人澁谷道』
栗林浩著『新 俳人探訪』
平成26年 栗林浩著『俳句とは何か』
平成27年 佐藤獅子夫句集『海坂』
荒井みづえ句集『絵皿』
矢上新八句集『浪華』
澤好摩著『高柳重信の100句を読む』

【現在の同人】(70号現在)
荒井みづえ・今泉康弘・入船誠二・江川一枝・小倉紫・梶原ひな子・栗林浩・後藤秀治・佐藤獅子夫・澤好摩
・柴勇起男 ・田中位和子・橋本七尾子・原田浩佑・原田もと子・味元昭次・丸喜久枝・三輪たけし・宮﨑莉々香・矢上新八・山田耕司・大和まな・横山康夫・和久井幹雄の24名

【物故者】
長岡裕一郎 平成20年4月30日没 54歳
糸 大八  平成24年3月9日没 74歳
伊藤華将  平成24年夏  没年不詳