花車賞 来栖啓斗「夜の学校に手紙を置いてきた」

花車賞(澤好摩 推薦) 第四回 円錐新鋭作品賞

春めいてもう永遠の子どもたち 

谷底の残雪やがて逢うために

みずうみに銃身浸す夜の秋

ひとの子も鹿の子もみんな気づかない

夏草や舌打ちすれば良いものを

鳴かぬ蝉から標本にしてあげよう

百合揺れて画布より零ゆる天使の死

すれ違う白夜とウスバカゲロウと

はつなつの白馬が駆けるはずだった

みなみかぜ微かに付着する痛み

永き日の生きていること思い出す

夏の宵いつも優しい機械かな

赦されて撃たれてみたき晩夏かな

満月の漂っている死後の恋

冬菫どこまで行ける夢だろう

寒き日や白黒写真に火をつける

寒林に漂う生きて死んでいく

触れられて私を失くす枯野道

雪が降る世界の終わりまで遊ぶ

世界凍つ生と死をみな後にして