新刊『渡邊白泉の句と真実』

俳句研究者
今泉康弘
渾身の評論集

新資料・証言に基づく
知られざる白泉の素顔

白泉は弾圧された体験のせいで、積極的に活動できなくなった。だが、その一方で、自らの内から句が沸き起こるのを止められなかった。それゆえ、徴兵されていた軍隊の中でも作句したし、戦後もひっそりとではあるが句を作り続けた。そうした生き方は矛盾かもしれない。戦後の白泉は、まさに、矛盾であることの苦しさを生き抜いたのである。

本書 「白泉とは誰か?」より

ISBN978-4-600-00716-4 C0095    A5判 194ページ
定価:1100円   発行:大風呂敷出版局  2021/4/22発行

発売中(定価1,100円+送料180円・全国一律)

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ドリーミング村上春樹 桐生上映会

ドリーミング村上春樹

2020年3月20日(金・祝)

 

二回上映します。一枚のチケットで、どちらかの上映を鑑賞していただけます。

13:40 開場  14:00-15:00

15:40 開場  16:00-17:00

桐生市市民文化会館 スカイホール

特別鑑賞券 500円

桐生市市民文化会館 プレイガイドにてお求めいただけます。

プレイガイド(09:00-22:00 毎週火曜日休館) 0277-22-9999

 

澤好摩に会いに行く道 

澤好摩(句)・河口聖(画)展
失われし時を求めて2023   澤好摩逝く 鑑賞記

澤好摩に会いに行く道    山田耕司

 

澤好摩に最後に会ったのは、いつの頃だったろうか。  

山田は桐生から出かけることもなかったし、澤さんも桐生に来るとは言い出さなかった。世には、「コロナ」という言葉が溢れていた。

生身で会うよりも、メールなりハガキなりファックスなり、言葉でやりとりしている方が、澤さんとの関係は良好だった。澤さんも、そう思っていたフシがある。

ことさら「会おう」と互いに言い出す事がなかった。

河口さんと個展を開催するという。会場は銀座のギャラリー。澤さんからのハガキには、ことさらメモなどあるわけではなかった。

仕事が立て込んでいたこともあって、足を運ぶ事がなかった。あの時訪問していれば、それが、澤さんとの最後の面会になっただろう。

今回の句画展は、河口聖さんが、澤好摩急逝を受けて特別に開催してくれたものだ。そして、山田にとってはあらためて澤好摩に「会い」に行く機会ともなった。

港湾の色なき風に象の藝  澤好摩

具象としての「象」を見てとる事ができる。それ以外、句の説明にあたるような事物は描かれておらず、であるからこそ、暗色を基調とした複雑な色彩そのものに引き寄せられる。画家が身体活動の上で刻み込んだマチエールが際立つ。

おそらく色彩とマチエールの面白さだけで作品化できる作者が、俳句作品へのオマージュとして組み込んだ具象のフォルム。それは、作品に個性を与えているだけではなく、澤好摩の俳句作品を読む上での導きにもなっている。

実景。可視化されうる世界。それをそのまま写し取るのを「写生」とするならば、澤好摩は、「写生」派ではない。読者の中でありありと受け取る事ができるように景物を妄想し言葉を操作する。それを「創作」とするならば、澤好摩は「創作」派であろう。

ちなみに、和歌の世界であれ、俳諧の連歌の世界であれ、「創作」こそが本流の手捌きであったし、高柳重信の作品もまた、その本流に位置する。
その流れを澤好摩は志向した。と、同時に、言葉を操作する上で、非情になりきれなかった作家でもあったとも思う。

「象の藝」。ここが、アマイ。そして、ここが、句の眼目でもある。サーカスなどで芸をする象。その振る舞いの切なさが、泣かせるポイント。この「泣かせツボ」こそが表現の眼目になることで、「港湾の色なき風に」が、その背景として後退する読みが生まれかねない。「泣かせ」を捉える巧みさと、それが句をアマクしようとも排除しきれない人情とが、澤好摩らしさをもたらす。

河口聖の絵画作品は、この「泣かせ」に振り回されることなく、具象の意味合いを霞ませながら、一句としての俳句作品の香気へと鑑賞者を誘うガイドでもあった。

かたくりの花の畢りを雨にかな 澤好摩

どっしりとした素材感のあるマチエールで仕上げられた作品が並ぶ中で、水彩画のような透明感を引き込んでいる一枚。もはや具象的な素材は登場しない。色彩も互いに輪郭を持たないままに、かさね塗りの奥行きの途上に立ち止まっている風情を見せる。画面左の暗黒と画面下の深い青。微かな面積だが、それらのキッパリとした色が絵画としての作品性を引き立てている。画面は縦80センチ、横85センチ。

カタクリの花の色彩を連想させながらも、画面には「説明」めくよすがは無い。コンポジションとしても、構造性が緩やかで、意味世界から離れつつ内面性をふんわりとつかまえたような作品だ。

「かたくりの花の畢りを」。ここまでに、述語は、無い。「を」によって、「畢り」という語は目的部に位置付けられ、述部によって意味に到達するであろうと期待する読者の意識の過渡に置かれる。そして、そこに「雨にかな」という下五。一句は、述部を基盤として構成される一般的な言語の文脈をはぐらかす。その寄るべなさと、画面の透明感が見事に出会っているのである。

今となっては、澤さんがこれらのコラボレーションをどのように見ていたのかを知ることはできない。ともあれ、もし、鑑賞の言葉を直接伝えたとしても、芸術論に至る前に、話が酒の肴に化けてしまうことが予想された。そんな落とし所は、私のためにも澤さんのためにもならない。

越谷のギャラリーKに赴いたのは、二〇二三年十一月十一日。この日は午後から亀戸での「圓の会」句会がある。鑑賞して駅へ向かう道すがら、河口さんに会うことができた。道端で話し、道端で別れた。

ああ、こんなふうに会っていればよかったのかな。簡単なやり取りのあと、ホームで電車を待ちながら、山田は澤さんとの会い方を今さらながら変更しなくてはと腹をくくるような気分になっていた。

円錐100号(2024年2月15日発行)より転載

上映会中止のお知らせ 2020/3/12

映画「ドリーミング村上春樹」桐生特別上映会

映画「ドリーミング村上春樹」
桐生特別上映会 中止のお知らせ

このたびは、映画「ドリーミング村上春樹」に格別のご関心をお寄せくださいましてまことにありがとうございます。
新型コロナウィルスの感染拡大防止の趣旨に鑑み、ご来場の皆さまの安全を最優先に考慮した結果、上映会中止の判断をさせていただきました。メッテさんが桐生に在住している間に上映を実現させたいと願っていただけに、残念です。
あらためて本作品を上映する機会を設けたいと存じます。その折には、是非ともよろしくお願い申し上げます。

チケットの換金について
お手元のチケットについて払い戻しをさせていただきます。払い戻しの期間は5月末日までとさせていただきます。お手数をおかけいたしますが、ご購入元あるいは下記の連絡先までお問い合わせくださいませ。

主催者へのメール
kojikojiyamada@gmail.com 山田耕司

2020年 ハリネズミを想いつつ

 

 

あれこれ試すはキツネのならい

受けて流すはハリネズミ

なすべきことは迷わずに

     アルキロコス

 


2020年

ひきこもりに磨きをかけて

不器用なふるまいを頼りに。

キツネの試行錯誤より

ハリネズミの一本道を。

山田耕司

山田耕司 句集『不純』

山田耕司 第二句集『不純』

プロデュースは佐藤文香さん

表紙画は山口晃さん

装幀 松田行正さん 杉本聖士さん

2018年8月初頭にリリース。

ISBN  978-4-86528-206-1
販売価格 定価:本体1500円+税
発行元 左右社 発行日 7月31日

 

『天の川銀河発電所』

1968年以降に生まれた、いま最もイケてる作家による現代俳句アンソロジー! 自身も気鋭の若手俳人である佐藤文香が撰者となり、【おもしろい】【かっこいい】【かわいい】の章ごとに18人ずつ計54人の作品から選句。頼れる俳句の先輩・上田信治、小川軽舟、山田耕司と対談した「読み解き実況」も掲載しています。

左右社 ホームページより

(掲載作家)
【おもしろい】
福田若之/生駒大祐/北大路翼/阪西敦子/鴇田智哉/高山れおな/小津夜景/相沢文子/宮本佳世乃/小川春休/西山ゆりこ/トオイダイスケ/小川楓子/野口る理/中山奈々/村越敦/黒岩徳将/宮﨑莉々香

【かっこいい】
堀下翔/藤田哲史/藤井あかり/髙柳克弘/村上鞆彦/榮猿丸/五島高資/九堂夜想/田中亜美/中村安伸/曾根毅/堀本裕樹/岡田一実/十亀わら/鎌田俊/矢口晃/三村凌霄/大塚凱

【かわいい】
小野あらた/外山一機/西村麒麟/田島健一/関悦史/津川絵理子/日隈恵里/長嶋有/矢野玲奈/髙勢祥子/津久井健之/澤田和弥/南十二国/佐藤智子/神野紗希/越智友亮/今泉礼奈/山岸冬草