細村星一郎「喝采」

今泉康弘 推薦 第二席

手繰り寄せれば鋼鉄の糸だった
喝采をそのまま海へあけわたす
迷いこんだ鳥を粗雑に塗ってもいい
霙浴びても浴びても手には割れた水晶
硬質な回転を血が嬉しがる
私を刺していった光の蛾 ふらふら
触れてきた木々がコントラバスを鳴る
朧はわたし 誰かの投げたブーメラン
シグナルに触れても鹿のもとまで走る
モノリスは胸の夏野に咲く楔
飛び込めば草の文様 繰り返す
水の刺繍 ゆれる梯子に立っていたい
かぐわしく私を動く蛇もいる
桃色の弾丸:部屋を跳ね回る
夏草は眠りの海を轟くか
いま旗に命の煙描き記す
糸の心臓:まばゆく墜ちる針の先
低く飛びながら椿の赤を思う
砂丘を登るきれいな錨持ったまま
山を透く一滴があり両眼で見る