とみた環「まぼろせる」

今泉康弘 推薦 第三席

液晶のモアレ ・ 二月のうす曇
空爆が ・ テレビ売り場を一斉に
菜の花や ・ 手をとる遊び赦されぬ
戦いに明けくれて描く ・ 自 由 帳
春は夢殿 ・ ロマノフの猫枕
予言書の ・ 昏さに装う訳詩集
抵抗者の詩に ・ 肉色 ・ の手を叩く
戦況や ・ 今朝のラジオと焦げのパン
麦青む志願の兵を ・ 思う ・ ほど
全集積まれひと隅を ・ 病巣のごと
背泳ぎに不滅の竜を ・ ま ぼ ろ せ る
水音のはだしが ・ 逃 げ て ・ 日雷
冷房裡 ・ 兵捕われて国ことば
日盛の傾ぐ額に ・ 口づけを
秋暑き遊具が ・ 青と赤の管
仰角のあやうき月 ・ の裸人像
椎の実が秋よと解り ・ ながら落つ
外つ者の猛き抱擁 ・ 白鳥来
兎の目 ・ 武器を嬉しむ男の子の目
戦争の件 ・ の無きに ・ 日記買う