あさふろ「点滅」

山田耕司 推薦 第三席

日だまりを目皿の泳ぐ淑気かな
白菜に水をあやまりつづけをり
ひしひしとひかりを語る椿餅
囀や一円玉に傷あまた
鳥影の輪転したる花曇
緑さすガードレールの痛ましき
水平線をはじく睫やレモン水
夏蝶の点滅したるアーケード
海光や黒蟻の背の透きとほる
能面はなで肩だらう冷し瓜
天井を見下ろしてゐる昼寝覚
煙草吸ふ肘の重さや夏の月
白桃を剥く親指の暗がりに
膝下の遠のいてゆく残暑かな
宵祭ひとの匂ひをうつし合ふ
紙コップ二つ離れぬ秋半ば
冬林檎無蓋列車を通過させ
雪の夜は十二階建ての翻車魚
風花や柱の心地して老ゆる
冬空に窓穿ちたる脚立かな