花車賞 来栖啓斗「夜の学校に手紙を置いてきた」

花車賞(澤好摩 推薦) 第四回 円錐新鋭作品賞

春めいてもう永遠の子どもたち 

谷底の残雪やがて逢うために

みずうみに銃身浸す夜の秋

ひとの子も鹿の子もみんな気づかない

夏草や舌打ちすれば良いものを

鳴かぬ蝉から標本にしてあげよう

百合揺れて画布より零ゆる天使の死

すれ違う白夜とウスバカゲロウと

はつなつの白馬が駆けるはずだった

みなみかぜ微かに付着する痛み

永き日の生きていること思い出す

夏の宵いつも優しい機械かな

赦されて撃たれてみたき晩夏かな

満月の漂っている死後の恋

冬菫どこまで行ける夢だろう

寒き日や白黒写真に火をつける

寒林に漂う生きて死んでいく

触れられて私を失くす枯野道

雪が降る世界の終わりまで遊ぶ

世界凍つ生と死をみな後にして

白桃賞 千野千佳「適当」

白桃賞(山田耕司 推薦) 第四回 円錐新鋭作品賞

風光る底のきれいなモノレール

鳥かごのほうれん草の濡れてをり

噴水の跡地にたてる指揮者かな

アイスコーヒー履歴書の端ぬれてをり

五歳ほどの人形をどる木下闇

あめだまを舐めつつシャワー浴びてをり

長梅雨や視力検査のしつこくて

法廷の小窓をのぞく日焼顔

猫にゑさしぼりだしたる盛夏かな

クーラーや適当にかくアンケート

ステージの両端にゐる水着かな

冷房の風に不安をそそられり

壺の湯の順番待ちの裸かな

走りつつ交尾の牛や露の秋

蚯蚓鳴く戦争ものの古本屋

さはやかやスワンボートのなかは船

男性はこぶしをひざに秋の暮

サンタのシール貼られて中華弁当よ

しはぶけばのどの奥より海かをる

門松やうどんにつける小ビール

第四回 円錐新鋭作品賞 推薦句

澤好摩 推薦

         

冬ざるる石の流るる石の川      佐藤日田路   

仏像の胸の弾痕合歓の花        赤木真理

リビングは淋しいところ鳥曇      植田井草 

土偶にはたましひの穴冬銀河      稲畑航平

胸の雪払ひ祈りを真似てをり      西川火尖


山田耕司 推薦

はらわたの無き白菜を真っ二つ    佐藤日田路 

はつなつの白馬が駆けるはずだった   来栖啓斗

短夜や皿濯ぐ水細く出し        赤木真理

座標として枯木はちよつとだけ未熟     沙山 

やることを放置してする自慰や夏至   高村七子


今泉康弘 推薦

如月やかもめは原子炉の真上      砂山恵子

クーラーや適当にかくアンケート    千野千佳

鴨の目に星雲のある人造湖       土井探花

ふらここや憂鬱といふ嗜好品       牧野冴

第四回 円錐新鋭作品賞募集!

俳句の世界は、これほど、広い。

受付開始 2020年1月15日 応募締切 2020年2月15日

審査  澤好摩・山田耕司・今泉康弘

応募用アドレス ensuihaiku@gmail.com

お名前(筆名・本名)、ご住所、メールアドレスなどの
連絡先をお書き添えください。編集部より連絡申し上げます。

未発表の俳句作品20句をお送りください(多行作品は10句)。*作品にはタイトルをつけてください。*締め切り2020年2月15日*年齢・俳句歴の制限はありません。*受賞作品は「円錐」85号(2020年4月末日刊行予定)に掲載いたします。■

第三回円錐新鋭作品賞

第三回 円錐新鋭作品賞


 花車賞(澤好摩 推薦)

「シエフを呼ぶ」  神山刻                →読む


白桃賞(山田耕司 推薦)

「青い万年筆の家」 西生ゆかり                        →読む


特別賞(編集部 推薦)

「七七日」    中山奈々                  →読む


 

推薦句                          →読む


 

選考対談                         読む


 

俳句同人誌「円錐」第 81号誌上にて発表(2019年4月30日発行)

 

 

第三回円錐新鋭作品賞 推薦句

澤好摩 推薦

         冬晴れや畑に市街のぞみつつ    大川原弘樹

         除雪車に遅れ除雪車続きけり    三島ちとせ

         文字から墨へ墨から文字へ雪柳        丸田洋渡

         神々は柱で数ふ花朱欒                      中西亮太

         稲雀グルメサイトに載らぬ店           山本雅子


山田耕司 推薦

         未だ揉めに揉めてゐるのに鳥帰る    海音寺ジョー

         病床の秋刀魚の味を忘れたる      菊池洋勝

         破れ芭蕉君は短気暢気ベイベ           佐藤修

         麗かや性交渉を示す手話                       ガイ

         ぬらぬらと株価這ひたる西鶴忌         犬星星人

特別賞(編集部推薦) 「七七日」中山奈々

特別賞(円錐編集部 推薦) 第三回 円錐新鋭作品賞


紋白蝶の腹嗅ぐ旅路

水切り石に蓬の名残り

挿すひとのあとから渡る

盗られしものをみな夜濯ぎす

爪焼くならば誘蛾灯なり

月映るまで鏡を傾ぐ

雨遠退かす鈴虫の山

尿意強める鵙の一声

凩に貼る収入印紙

来世をひとつ日光写真

(編集部選)

白桃賞 「青い万年筆の家」西生ゆかり

白桃賞(山田耕司 推薦) 第三回 円錐新鋭作品賞


一月を通る模様の無い電車

ドトールをはみ出してゐる福袋

寒鯉を見に行く簡単な靴で

タピオカの浮くや沈むや姫始め

水仙や無言電話に息少し

冬帽の揺れの激しい方が親

消火器は三文字冬の書道展

夕時雨青い万年筆の家

くしやみしてうつかり岸へ来てしまふ

遮断機はいつか壊れる冬の水

短日を水煙草屋で適当に

ゆるゆるのオムレツ日本橋に雪

雛壇の前の二重の自動ドア

紙の雪走れば近いスリランカ

春昼や輪廻の如き寿司レーン

嫋々と雨菜の花の辛子和へ

三月や手錠の色の台所

店頭の帽子の歪み鳥交る

チョコバナナも仏も春の雨の中

たんぽぽや地球征服したら暇