白桃賞 「青い万年筆の家」西生ゆかり

白桃賞(山田耕司 推薦) 第三回 円錐新鋭作品賞


一月を通る模様の無い電車

ドトールをはみ出してゐる福袋

寒鯉を見に行く簡単な靴で

タピオカの浮くや沈むや姫始め

水仙や無言電話に息少し

冬帽の揺れの激しい方が親

消火器は三文字冬の書道展

夕時雨青い万年筆の家

くしやみしてうつかり岸へ来てしまふ

遮断機はいつか壊れる冬の水

短日を水煙草屋で適当に

ゆるゆるのオムレツ日本橋に雪

雛壇の前の二重の自動ドア

紙の雪走れば近いスリランカ

春昼や輪廻の如き寿司レーン

嫋々と雨菜の花の辛子和へ

三月や手錠の色の台所

店頭の帽子の歪み鳥交る

チョコバナナも仏も春の雨の中

たんぽぽや地球征服したら暇