誰だかわからない 「クプラス」3号

 

蓑虫よ靴は盃ではないとあれほど
両腿に挟まれてゐる顔の秋
虫かごをまたぐときの声だよそれは
朝顔やゆるしはないが耳を咬む
日輪にまつ毛は無くつても秋冷
秋の虹はたらけよいいから働けよ
暗きより出てその腕が菊人形
にんげんに育つて浮いて秋の岸
知命だもの穴まどひなどせぬつもり
腋に毛の剃るほども無く声の鹿
ゆく秋の口よりお湯が出るしくみ
お月見や脱ぐと誰だかわからない
んの字にしやがんで待つよ焼秋刀魚
手を握ろう団栗なんて捨てちやつてさ