白桃賞 「総国(ふさのくに)」 佐藤文香

白桃賞(山田耕司 推薦)第一回 円錐新鋭作品賞


ゆまりしてあかざは指に挟む花

幾山河透かして蟬の羽乾く

石英の太き尖りも夏のもの

坤王林の麵麭焼きにけり

あさがほのたゝみ皺はも潦

絵蠟燭件の人の来て帰る

月かげのもつれて淡し雁擬

海原の微塵に冬の来るなり

木に枯れて葉の手ざはりの日と思ふ

日輪に縮むうつゝや初筑波

羊日や干瓢ほどき昆布ひらく

手庇の手がよく見えて葱畑

まんぢゆうや水戸街道を休みつゝ

手賀沼の光とほのく卍かな

姫君や貌鳥に喩を教へこむ

白梅にうすき眉根のまじなひ師

春風や手鏡ごとの鼻の穴

あをぞらをあなくきやかにやまひだれ

石楠花よ光溜りの目のやり場

つちくれを流るゝ水や手に手旗