植田遥大 「がら空き」

第10回 円錐新鋭作品賞 灰雪賞(赤羽根めぐみ推薦)

風のてざはりを思い知るのは冬ばかり
公共の場と言へるのだらうかじぶんひとりの公園は
いちめんに名残ばかりの金魚鉢
空の輪にしやぼんいちまい沿つてゐる
見過ごしたり見過ごされたりしてゐる木馬
斜めに差した日差しにかける言葉はないよ
蟻たちのひとふで書きにできる脚
手に取れば枯れ葉はもう風景ぢやなかつた
旧かなでぼそぼそしやべる印刷機
青葉闇あなたの手相のほうがすき 
にんげんの模様うつくし夜の指
音がしないもんだよじやうずな相槌は
造りこまれたヘアスタイルを犬ですらしてゐる
行きずりのかまきりにがら空きの腋
もう少しで桜が季語になるだらう
つまんない電話がひとつ風の歌
ゴム手袋のやうに延びてるソファの上で
昨日みた星座のはなしをしたかつた
爪を落葉と思えばさうも見えてもくる
落椿犬には犬の主体性