伊丹啓子推薦 第三席 第9回円錐新鋭作品賞
手の国の聾学校はしぐれゆく
時雨にも龍にも耳のない理由
しぐるるも母の母校も手話使う
おしゃべりのごとく手話べる時雨かな
本日の補聴器の色決めしぐれ
聞こえない姉と一緒や時雨来る
ひと時雨読唇術の恋をして
途中から時雨の音を失って
時雨の音をたとえてと頼まれつ
時雨止み手話の告白される距離
答えずに横の時雨と生きるひと
通訳者時雨いよいよ訳さずに
通訳の服の黒さや北しぐれ
指文字は一瞬にしてしぐれけり
片時雨あらわす手話を探しつつ
補聴器の不調しぐれを誘い出し
障がいの「碍」の字つかう人しぐれ
時雨傘わからぬ手話の言葉狩り
しぐるるや補聴器はずし謹慎へ
手を椅子に縛られしぐれ佇んで