垂水文弥「鬼の子にんげん」

白泉賞(今泉康弘推薦 第9回円錐新鋭作品賞)

手毬つこか鬼の白髪を煮て食おか
戦争はおとなの遊び こづくりも?
くわんおんのゑまふはゆきぼたるのはか
花冷や幼な帝の喉仏
わたしの国会を金色の蝶あふれよ
姉の髪を盲人あゆむ椿かな
虐殺のゆふぐれを蝶くりかへす
すこし死にたくない日の祭の風のなか
えいゑんにわたしの夢をみる海月
それはしづかに夏駆けてゆく神様であつた
水だ蛇が息を辿つて金星をおほひつくす日の
かつて焔の中の夏野に我も坐す
つゆくさの季くちづけに要る力
彼の踊子の血縁を火と呼びにけり
木星の磁気の嵐の梨を食ふ
死なないでゐる月光の舟となる
ひとびとをとうめいにする國よ鶴
なりたいものは手袋と、死。あなたの
いつかこの書斎を銃が踏む日の雪
走り出した狐は止められないだれにも