山田耕司推薦 第二席 第9回円錐新鋭作品賞
見せてはやしわくちや愛の日の半券
人だかり越しの春めく目当ての絵
彫像のどれも首なき木の芽時
春愁い三歩ほど退き絵の全容
春昼の掛けてよき椅子ならぬ椅子
題を見てまた絵の細部鳥の恋
骸置くように春日のピアノ閉づ
絵に飽きて涼しロビーの緋いソファ
モネの絵を説く館長のオーデコロン
我だけに見ゆる噴水ショーの虹
油絵へ落とされたかに街残暑
菊の香や市民は昏く描かれあり
爽籟や泡まとわせて木のマドラー
サフランと並びて作者不詳の絵
白竜の絵が秋更くる床一面
額縁の厚みにほこり室の花
付き添いの着膨れに絵を語りきり
ショール巻き直しこの絵の前になお
もう音のせぬほど踏まれきる落葉
ふくろうのまるで名画を求むる眼