おおにしなお「うまれるまでの花わすれ」

今泉康弘推薦 第三席 第9回円錐新鋭作品賞

ぱせりのこさずこれまでのいのちの忌
れーこんふとらせまだほうようの薔薇がある
幽霊 恋の可能性で不可侵の心臓
化けて出ないのうつし世の百合釣りながら
にくたいのさばる残暑の街をすりむいて
ねーまだたましい、? 十月十日を足らず秋
おせわひつよう花野にひかる出生日 
柚子の庭未明の喃語ひろいあげ
からだすくわれしぐるるこども部屋
雪から失くしてかなもなみだも憶えたよ
えーたん最北端の花ゆれながらまたえーたん
うまれたね朧の部屋をふるえつつ    
ぼうぜんじしつ いつまで春に置きっぱなし
はごろもじゃすみんよくねむれたらたべる雲
なつやすみときどき新鮮 ふ とう こう
秋の海ふつうの花をみくだして 
いつか母体になれない母体 スコーンめぐる
まぜるときミルクにつゆくさのおいのり
命脈を言葉を露にみとめる日
ふれればいいよ産着の花にもういちど