白桃賞 (山田耕司推薦 第8回円錐新鋭作品賞)
目で追うて木目短き暮春かな
カットせず残す燕のゐるシーン
藤棚や煤のごとくに地に光
髪も歯も無き母の日の絵を飾る
風鈴を仕舞ひて旅へ出でにけり
肩紐の褪せてきてゐる水着かな
すぐ闇に戻る花火の発射台
裏庭に金魚を埋めし黒さかな
八月に篝のやうな船ひとつ
灯台のためのポストや鴨渡る
菊の日の只中にゐる調律師
宵闇やパンに乗せたきもの揃ふ
湯の柚子を遊ぶほかにも用ゐる手
永遠に走るバナーのサンタかな
二人して人参買うて来てしまふ
初夢に君はゐなかつたと思ふ
豆打の声に子のゐることを知る
ラジオから鯨を追へる人のこと
酔ひたれば雪折とほくおもひけり
写真館のサンプルずつと冬の人