小林恭二 推薦 第二席 第8回円錐新鋭作品賞
燕来る山は己の色知らず
花冷の樹のこゑ空を上りゆく
詫び状が来る花冷の昼下り
爆心のしづけさに似て蟻地獄
炎昼の磐座を翔つ大鴉
蟻食の舌長々と大暑かな
夏逝くやドリンクバーの端にゐて
仏塔の壁の剥落終戦日
妻恋の歌口ずさむ秋の草
序文なき句集閉ぢたる天の川
秋風鈴純文学に倦みし頃
頂を隠す白雲西郷忌
手品師の休日小鳥来たりけり
師を訪はぬ歳月長し葉鶏頭
子午線の上に家あり鳥渡る
ピッチングマシーンの音冬に入る
雪嶺に雲父の眼か母の眼か
次の世も次の世もまた雪女
白鳥の声に滴りさうな月
初日さすなりガンジーの丸眼鏡