山本たくみ「着席せよ」

山田耕司 推薦 第三席 第8回円錐新鋭作品賞

入学や順路の札を木に括り
春の川言ふほど中身なき校歌
ばいきんをなすりつけあふさくらかな
もう塾で習ひしそれや夏に入る
薫風の机を班のかたちにす
残業の四年二組のごきかぶり
臨海学校パンツを部屋に忘れけり
花丸に茎と葉添ふる昼寝かな
秋霖や写して終はる詩の授業
小鳥来る廊下天地の分からぬ絵
給食のこれを松茸飯と言ひ
フラスコの微かに揺るる運動会
窓あけて体育館の冬はじめ
挙手指せば今日は開戦日だといふ
校長を社長と呼びて年忘
ストーブに飽きし者より着席せよ
書初の[夢]に大小参観日
一人称先生たまに炬燵でも
呼名簿にマイクの影のうららけし
卒業の紅白幕を残したる